神紋・寺紋の推定

 神社や寺院の固有の家紋をそれぞれ神紋,寺紋という。 狭義には神紋は祭神毎に定まった固有の紋のことで神社の紋(社紋)とは別物だが広義には社紋も含めて神紋と呼ぶ。 また,寺院においては宗派ごとに宗紋と呼ばれる固有の紋があり,それを各寺院の寺紋とする例が多いようだが, 神社同様に独自の紋を持つ例もあり,ここでは宗紋使用も含めて各寺院の寺紋と扱う。 これら神紋・寺紋は寺社のアイデンティティや出自の象徴であると同時に見た目にも華やかで,そのデザインは現代の文化にも通じる。 ここでは寺社巡りを通じて推定できた神紋・寺紋を整理してみた。

①水の渦の文様,②トモエ=鞆(とも=弓手に巻く皮具)の絵という語呂合わせ,③文様の要素が神霊の象徴である勾玉(古代の宝器)の形をしている。これらのことから八幡神ほか多くの神社で神紋とされる。回転方向左右に意味の違いはないようだ。大崎八幡宮では左右の使用が見られる。

左三つ巴

左三つ巴

大崎八幡宮,二柱神社,沖野八幡神社,鹿野八幡神社,舞臺八幡神社,二木神社,亀岡八幡宮,野中神社,羽黒神社(北山),宮城野八幡神社,箱石神社


右三つ巴

右三つ巴

大崎八幡宮,四社宮,愛宕神社(七北田),宇那禰神社(郷六),長樂院不動尊,八幡神社(野村)


引両

両は竜の転化。引き両の一本の線は一体の竜を表す

丸の内に竪三つ引両

丸の内に竪三つ引き両

始祖朝宗より14世稙宗まで定紋として使用された伊達家最古の紋(以降は竹に雀紋が定紋)。仙台は伊達家ゆかりの寺社が多く寺社紋としての使用例も多い。

大満寺(小角),輪王寺,覚範寺,耕田寺(岩切),瑞鳳寺,善応寺,大聖寺,大年寺,桃源院,満願寺,満福寺,龍澤寺,林香院,四社宮,龍宝寺,栽松院,滝沢神社,野中神社,青葉神社,永昌寺,荘厳寺,松源寺,満勝寺,東昌寺,光明寺,法運寺,妙心院,大林寺,正雲寺,東秀院,秋保神社,五柱神社


月と星

陰陽道・妙見信仰等に連なる天体信仰

九曜

九曜

九曜曼荼羅信仰由来の天地四方守護を表す。政宗が細川家に所望し,以降伊達氏家紋として使用。国分氏の家紋でもある。

鹿落観音堂,瑞鳳殿・感仙殿・善応殿,成田山国分寺,陸奥国分寺(本坊,薬師堂,准胝観音堂),龍澤寺


七曜・七つ星

七曜

日月火水木金土の七星を表すとも北斗七星を象るともいわれる。妙見信仰と結びつき,妙見菩薩を武神として崇敬した武家に拡がった。日蓮宗では妙見菩薩を一族の守護神とした千葉氏との関わりが深かった宗祖・日蓮が重んじ,法華経の守護神である七面大明神(七面天女)信仰に結びついた。

妙音院


三つ星

三つ星

戦勝の三大将を表わす勝ち星。

白山神社(木ノ下),東禅寺


天神の神紋:東風吹かば 匂ひをこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ…梅を愛した天神 菅原道真に因む

梅鉢

梅鉢

菅原道真の後裔 菅原氏の家紋。

堤町天神社


剣梅鉢

剣梅鉢

榴岡天満宮

※加賀前田梅鉢(剣梅鉢)に似た梅鉢というか,その一種でしょうか。中心部分の○,花芯の表現がありません。


タチバナの実と葉。日本十大紋の一つ

日蓮宗橘(平井筒に橘)

日蓮宗橘

日蓮宗の宗紋:宗祖日蓮の出自(井伊氏の一族)家紋。井桁は井伊氏の「井」に通ずる。

孝勝寺,智遠寺,妙法寺(北山),法輪院,妙音院,蓮香院,本國寺,法運寺


桔梗

桔梗

桔梗

真言宗智山派の宗紋:総本山智積院の寺紋=智積院創建に功績のあった加藤清正の家紋。

大聖寺,満福寺,弥勒院,大滝不動尊,西光寺(秋保),宝泉寺


丸に桔梗

丸に桔梗

大満寺(向山)


木瓜

正式には「もっこう」と読むが訓読みの「きうり」とその文様から胡瓜の切り口が連想された。須佐之男命を祀る祇園社の神紋。日本五大紋の一つ

逆五瓜に唐花

逆五瓜に唐花

八坂神社(岩切)

※一般的に全国の八坂神社神紋は五瓜に唐花。当社神紋が逆さである由縁は分からない。


日本の代表花。木花開耶(コノハナサクヤ)姫の神紋ともされる

桜

櫻岡大神宮


二つ引に桜

二つ引に桜

真言宗御室派総本山 仁和寺の寺紋。

龍宝寺


竹笹

平安・鎌倉期からある文様。高潔さ・生命力・繁殖力の験

丸に九枚笹

丸に九枚笹

延壽院


竜胆

リンドウの葉と花

笹竜胆

笹竜胆

リンドウの葉は笹に似ているので別名「ササリンドウ」ともいう。笹紋とは異なる。源氏の代表紋。

諏訪神社(上愛子)


久我竜胆
(久我山竜胆,久我竜胆車)

久我竜胆

曹洞宗の宗紋:二大本山の一つ永平寺寺紋=宗祖道元の出自 久我氏家紋。

安養寺,雲洞院,金昌寺,皎林寺,成就院,清水寺,泰心院,東禅院,保寿寺,弥勒寺,龍香院,龍泉院,宗禅寺,福寿院,全玖院,龍雲院,光寿院,洞林寺,松音寺,林松院,東秀院,瑞雲寺,金勝寺,長徳寺


中国の故事に基づく天子の象徴=皇室紋→下賜による拡散→日本五大紋の一つ

五七桐

五七桐

曹洞宗の宗紋:二大本山の一つ總持寺の寺紋。政宗が秀吉より拝領した伊達氏家紋でもある。

安養寺,雲洞院,生出森八幡神社,和光神社,金昌寺,皎林寺,成就院,清水寺,泰心院,東禅院,保寿寺,弥勒寺,龍香院,龍泉院,宗禅寺,福寿院,全玖院,龍雲院,光寿院,中田神社,洞林寺,松音寺,林松院,東秀院,瑞雲寺,金勝寺,長徳寺


五三桐

秀吉が信長から下賜された桐紋。後に豊臣姓を名乗り当時の後陽成天皇から下賜されたのが五七桐で,その後は五七桐の方を用いたという

専能寺


金輪桐

金輪桐

多賀神社


平家の代表紋

丸に揚羽蝶

丸に揚羽蝶

西方寺(定義如来),秋保神社


魚または蛇の鱗を表す幾何学文様。北条氏の定紋

三つ鱗

三つ鱗

臨済宗建長寺派の宗紋:鎌倉建長寺の寺紋=創建者北条氏ゆかりの家紋。

資福寺

※資福寺は現在は妙心寺派だが創建時は建長寺派であった


丸に三つ鱗

丸に三つ鱗

玄光庵

※某ブログによると住職家の家紋のよう(北条氏とは関係なさそう)


釘抜

釘抜き→九城抜き→九つの城を陥落させる=戦勝縁起

丸に釘抜

丸に釘抜

飯田八幡神社


梶の葉が神前に供える供物の器として用いられたこと→神職の紋

丸に梶の葉

丸に梶の葉

信州諏訪大社の神紋

諏訪神社(郡山)


鳩が八幡神の使いとされたこと→八幡信仰に結びつく

坪沼八幡神社紋

坪沼八幡神社紋

二羽の鳩が「八幡神の八」を表す「対い鳩紋」の一種。坪沼八幡神社の独自紋と思われる。

坪沼八幡神社